広告会社のクリエイティブテストを突破する方法
今回は広告業界を中心に課されるクリエイティブテストの対策法や考え方について書いていこうと思う。
広告業界を志望するならクリエイティブテストへの理解は必須だ。
まずはじめに、筆者はクリエイティブテストが課される大手広告会社のインターンに高学歴ではなくても通過していることをお伝えしておきたい。(詳細は下記の記事を参考にされたい)
この記事中でも主張している通り、クリエイティブテストで見られているのは
・課題を設定してそこに解決策を打てる思考
・相手目線に立ったコミュニケーションスキル
・現在の広告会社を取り巻く状況、基本的なビジネスモデルの理解
なのではないかと考えている。
これを踏まえて具体的な課題を例に出して、クリエイティブテストに望むための考え方のヒントになるものを提供できれば嬉しく思う。
目次
①まず、対象についてとにかく調べろ
まず重要なことは、とにかく◯◯について調べることだ。
博報堂では次の記事でブランディングの際に用いる「リボン思考」というフレームについてこう述べている。
私たちの共通言語、リボン思考とは? | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議
リボン思考とは、図のような基本的な思考や発想作業の流れを示したものです。左から「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3つのステップからなるシンプルな構造で成り立っています。インプットではできるだけ多くの情報を収集し(拡散)、コンセプトを絞り込み(収束)、そこからアウトプットを多彩に拡げていく(拡散)。そうした意味を込めています。
僕が言っている「まず◯◯について調べろ」というのはここで言うインプットにあたる。とにかく自分が持つ◯◯への知識を増やし、偏見を取っ払い、◯◯に関する漠然としたイメージを広げることが大事だ。
◯◯が例えば眼鏡だとしよう。
あなたは眼鏡について「よく見えるようにするもの」ということ以外にまったく知らない状態で、眼鏡を流行らせることができるだろうか? 恐らく、かなり厳しいと思う。
ここで、「丸眼鏡が流行っている」「ディスプレイを長時間眺めるせいで目が疲れて困っている人が多い」「眼鏡をつけている女性に色気を感じる」などのデータが取れたとしよう。そのデータの信憑性や実用性はとりあえず置いておいて、あなたは眼鏡に対して想像する範囲が広がるはずだ。
そして、この記事のなかで何より強調したいのは、「インプットが大事すぎる」ということだ。
いったい、それはどうしてなのか?
大抵の学生はアイデアを「思いつきでひらめくもの」だと勘違いしている。もっと言えば、「自分は良いアイデアが思いつく側の人間」だと勘違いしている。だから、特に調査をしてインプットを得ようともせず、自分の知っている範囲のみで「アイデア」を出そうとする。
しかし、実際アイデアは思いつきでもひらめきでもない。
アイデアを分解すると、知識を「蓄積する」×「組み立てる」×「整える」という作業になると思う。つまり、必ずしもアイデアの発想には天才的なひらめきは必要じゃない。
仕組みさえわかってしまえばアイデアはつくれるのだ。さらに言うと、正しいアイデアのつくり方さえ理解できれば、クリエイティブテストを戦略的に突破することも容易だ。
話を戻すと、まず◯◯について調べるために、調べる方法を考えるという作業が必要になる。
私が提唱したい流れはこうだ。
1. 自分が思う◯◯に対するイメージを書き出し、そこから思いつく単語を思いつくままに書き出してみる(これを暇な時に何回か繰り返す)
2. 書き出した中で◯◯が流行らない要因となっていそうなものを抜き出してみる(眼鏡だったらオタクのイメージがあるとか)
3. 2で抜き出した要因について調べてみて、課題の仮説を立ててみる
そして、1・2・3を何度かやってみる。
これで、あなたの◯◯に対する「こうしたら流行るんじゃないか?」という漠然としたイメージの欠片くらいは見えてくるはずだ。(見えてこないなら何度も上の作業をやれ)
②◯◯の本質と可能性を考える
①の作業をおこなう上で、◯◯に関する見識は広がったはずだ。次に、◯◯の本質や可能性を考えたい。
本質とは、「世の中で◯◯は何のために存在しているのか、どういう役割を果たしているのか」ということだ。可能性とは、「こういう環境や状態になったら、◯◯はもっと輝くのに」という理想だ。
目的である「流行らせる」を達成するためには、◯◯に対する見識を深めた上で、
「それは現状誰のどんな欲求で成り立っていて、誰のどんな欲求を叶えることができればまた別の人に受け入れられるのか」
ということを考える必要がある。
また眼鏡の例を出すと、
眼鏡の本質が、「視力が悪い人が普通の人と同じくらい見えるようにすること」だとしよう。現状眼鏡はそういったユーザーに受け入れられているだろうと推測する。
では、誰のどんな欲求を叶えれば、眼鏡の可能性は広がるのだろうか。
例えば、「眼鏡が似合わないと思うからあまり主張の強い眼鏡はかけたくない」という人がいたとして、「目立たない眼鏡」があれば、課題を解決できるんじゃないだろうか。つまり、これをコンセプトに直すと「眼鏡が似合わない人のための眼鏡」になるのだ。
後はそれをプロダクトやサービスのカタチに整えれば終わりだ。
ここまで読んで、「流行らせると課題解決は別なんじゃない?」と思った人もいるかもしれないが、「流行らせる」は「現状流行っていない」という課題に対する解決策を講じるということとほぼ同義なのだ。
③◯◯の可能性を最大化するカタチと状況を提示する
①で調査、②で本質と可能性を考えた。
次は、「可能性を最大化するカタチと状況を提示する」ということを考えたい。
先程の眼鏡の例で言うと、「眼鏡が似合わないと思うからあまり主張の強い眼鏡はかけたくない」という人のために「目立たない眼鏡」を考えてみたはいいものの、その仕組みをただ「発明しました」と言うのでは一歩足りないのだ。
旧来の日本企業の悪いところであるが、高機能なハードばかりつくって、実用性やビジョンがない。誰がどんなふうに使ったらハッピーになるのか考えられていない。
つまり、課題に対しての解決策というのは、「こうすればいいんじゃない?」という文句で留まらず、「リアルな状況を想定して本当に実践できるカタチを提案」しないといけないのだ。
「リアルな状況を想定して本当に実践できるカタチの提案」をもっと具体的に言うと、
・どんなメディアがターゲットと親和性が高いのか
・どんなキャンペーンをすればターゲットは◯◯の魅力を感じるのか
・目の前にターゲットがいたとして、本当にそれを欲しくなるのか
などを考える。
いつどんな場面にどういう方法で◯◯と出逢ったらターゲットとする人は幸せになるのかを丁寧に想像することが大事だ。そして、それを実現できるカタチはどんなものか、それを実現できる状況はどういう場合なのかを説明できる必要がある。
くれぐれも、「CMを打つ」「インフルエンサーマーケティングをする」「ポスターをつくる」みたいな答え方はしないで欲しい。有名人と莫大な予算をつければどんなものも宣伝になるというのは甘い考えであり、広告会社の方が一番嫌う発想だ。
彼らが見たいのは、コアアイデアであり、あなたがそこを目指した痕跡である。
最後に
すこし小話ではあるが、就活系のサイトにはクリエイティブテストの対策方法がなかなか載っていない気がする。その実態は本当に酷いもので、「クリエイティブテストの対策」と名打ってはいるが、中身は当たり障りのない選考の流れである。そんな情報に価値はひとつもない。しかし、就活系のサイトにはクリエイティブテストの対策方法が載っていない理由は、究極的なことを言ってしまえば「対策方法なんかない」からなのかもしれない。
ある程度の基準や考え方はあるものの、企画というものは答えがないし評価する人によって「良い答え」は違う。答えがないからこそ、広告会社やコンサルティング会社のような頭脳職が存在して必死に足掻くわけだ。
しかし一番大事なことは、「そのアイデアは誰のためのものですか?」ということに自信を持って答えられるように準備することなんじゃないかと思う。そして、「その誰かがあなたのアイデアによって、目の前で幸せになる様子を真剣に考えましたか?」と私は言いたい。
誰の課題も解決しない突飛なアイデアなんて必要ないと思う。
それでは。